Butterfly only knows.

札幌のデザインマネジメント会社社長のブログです。

川端康成『古都』より

そのデザインおいくらですか?

 ものの色形を決めるという狭義のデザイン業務の対価、これをどのような根拠に基づいて設定するかで随分と悩んだ時期があった。こっちも生活があるのでこれぐらいは欲しいとか、相場的にこれぐらいしか請求できないなとか、そもそもこの額で〜と決められているとか。

 時々デザイン系のセミナーに関わることがあり(8:2の割合でしゃべる方:聞く方)、質疑応答タイムというのがお約束であるのだけど、若いデザイナーが(時としてそれほど若くないデザイナーも)デザインフィーの設定について、まるで仕込みのように必ず質問してくる。みなさん同じ通過点を共有してるのですね。

 基本的に弊社はクライアント直の案件しかやらないので、フィーの交渉にはかなり有利であるには違いない。がしかし、それは裏を返すと金額関係の調整をしっかり自分たちで行わなければならない、というか、うっかりしてると百戦錬磨の中小企業社長にやられてしまうという意味でもある。値切るという行為を通り越して、なんとかそれタダになりませんかね、などとつらっと宣う方も過去いらっしゃった。

 そういう時いかに顔色ひとつ変えず、眉も微動だにせず、欲しいと思う対価をきちっと主張できるかどうかは、場数もあるが、やはり体系立てられた業務行程の組み立てルールが社内的に出来てるか、それぞれの行程や担当者における単価設定がなされているかによると思われる。つまり根拠ある金額であるかどうかということ。

 いろいろ思い悩み、結局たどり着いたのは非常にオーソドックスな身も蓋もない考え方で、

  • スキルレベルに応じた単価×時間(いわゆる人工計算)
  • 初期費用+発注者が得る利益×係数×個数 (いわゆるロイヤリティ)

に集約することに決めてしまった。もちろん人工ベースで見積もることの弊害も把握した上で。

 優先順位としてはロイヤリティベース→人工ベースの順で、ロイヤリティで計算できない案件(クライアントに利益が発生しないとか)、あるいはロイヤリティベースでは利益がでにくい(見込みロイヤリティベースの額<人工ベースの額)案件の場合のみ人工ベースで見積もることにしている。

 つまり、これはいけそうと思われる案件についてはデザイナー側もリスクをとってロイヤリティベースにし、かわりに積極的に(時としてその製品やサービスの根幹に踏み込むことも厭わず)関与するスタイルをとり、そうではない案件ではリスクをとらず短期で回収してしまうわけだ。

 非常にシンプルでわかりやすい。少なくともこれまでクライアントに高いと言われたことはあっても、なぜ高いのかとは聞かれたことはない。そうだよねーこれぐらいかかるよねーが定番の台詞。こちらのリスクテイクを説明し、それに相当する対価を明確に示せれば大抵は納得していただいている。

 ランチに入った店にメニューがなく、じゃぁカレー(好物)はいくら?と聞いてるのに、んーいくらぐらいですかねーいくらなら出せます?よそはいくらでやってました?なんて店員に言われたら即座に席を立ちませんか、普通。
デザインフィーは明確に、きっぱり提示。これが大切。

※ロイヤリティベースで行く場合、回収できるかどうかの見極めと、回収できるタイミングには細心の注意を払うこと。契約書を取り交わすのは当然必須。経営的にキャッシュフローの把握・管理もしっかりと。


♪ I'll Never Fall In Love Again / みちしたの音楽