Butterfly only knows.

札幌のデザインマネジメント会社社長のブログです。

川端康成『古都』より

学生へ・デザイナーを目指すべし

 先日デザインを学んでいる若い大学生の方々と話をしてみた。彼女たちは基本的にはデザインが好きなものの、仕事としてのデザインについてはずいぶん悲観的なイメージを持っている様子。
 確かに広告の(それも流通メインの)グラフィック系デザイン会社は相当にハードワークなのはみなさんもご承知かと。家帰ってる?という状態の方もちらほら。
 いっぽうでメディアに登場するデザイナーはかなりカッコイイ。その作品はもとより、デザイナー自身のライフスタイルや言動が注目されていたりして、先の若い学生たちも影響をうけているとのこと。でも、端的に言って違う世界と認識しているらしい。

 学生たちがデザイナーという職業にネガティブなイメージを持っているということにショックを受けつつ、そういえば自分たちがまだ卵か、あるいは駆け出しだったころはどうだっただろうかと、ふと思い返してみた。


 デザインの世界に入ったのは、かれこれ15年ほど前。世の中はまだ非常にバブリーなムードの頃で、入社した日から歓迎会と称して連続3日間すすきのに繰り出すぐらいの超アッパーな日々が待ち受けていた。デザインの仕事はとても華やかで、電○やら○報堂から丸投げされたイベント案件を企画書やらデザイン案に落とし込むという、20代前半のスタッフには殆ど遊びの延長がそのまま仕事になるような感じ。
 道具的にもちょうどアナログ→デジタルの移行期で、導入されたばかりのMac(SE30とかIIsiとかciとかfxとか)をどう使ってやろうかと試行錯誤する日々。ほぼ毎日夜中の2時3時まで会社であれこれ試し、かなりの頻度ですすきのに遊びに行き、翌日また仕事みたいなサイクル。いつ寝てたのか。

 しかし楽しい時期はいつか終わるもの。バブルもはじけたある年のある日、いつもの通り出社した僕らは、会社のドアに「財産保全命令」という張り紙を目にしたのだった(つまり倒産)。後で知ったが億単位の負債だったとのこと。たかだか10数名のデザイン会社が億単位の借金ができたこと自体びっくりだが、そんなことはおくびにも出さず突然失踪した社長には全くしてやられた。(ちなみにその日は僕の誕生日だった。Happy Birthday to me.)

 その後紆余曲折あり、20代最後の年に起業するわけだが、その間デザインの仕事は常に楽しく、面白く、新しい発見の連続であり、自分のスキルが上昇すればその分仕事の幅も広がるというとてもやりがいのある仕事であり続けた。もちろんそれはスタイリッシュなものではなく、どちらかといえば泥臭く、地味で、一般的には辛い(長時間の労働と低い対価)仕事であった(今もだけど)。

 デザインを学ぶ全ての学生に伝えたい。
 デザインという仕事は、完全に実力次第で、自分のスキルやセンスの成長がそのまま仕事にダイレクトに反映される最高に面白い仕事である、ということを。日々をただ何となく過ごしてしまうタイプの人には向かないと思う。自分で好奇心のアンテナをたて、新しいテクノロジーを取り入れ、新しいライフスタイルを学び、知らない場所に飛び込んでいく挑戦を恐れずに続けられるなら、間違いなくデザイナーとして成功できると思う。迷いなくデザイナーを目指すべし。

 といいつつ、自分の仕事を脅かす若い芽は今のうちに摘んでおこうと思っていたり。


♪ Norwegian Wood / The Beatles