Butterfly only knows.

札幌のデザインマネジメント会社社長のブログです。

川端康成『古都』より

スープカレーが地元オリエンテッドマンションに

 以前会社から歩いてほんの数分のところに美味しいスープカレー屋があった。あまり一人で食事をすることは好まないが、その店は例外で、ひとりの時でも発作的に足が向いてしまう希少な店だった。特に軽く素揚げされた野菜が神懸かって美味しく、普段の野菜不足な食生活がだいぶ救われていたと思う。

 しかしだ。ある日しばらくぶりに歩道橋を渡りその店の前まで、というかそこのブロックまで行ったところで呆然と立ちつくしてしまった。そこにあるべきはずのスープカレー屋が「ない」。スープカレー屋だけではなく、そこの一区画にあった大小の雑多な建物群が丸ごと忽然と姿を消していたのだ。そこには荒くならされた土埃でかすむ更地がただ広がっているのだった。

 嗚呼再開発。文字通りのスクラップ&ビルド。Yellowはいずこへ★。
★ 南3西1に移転してます。

 どうやらマンション建設予定地となったようで、心の中で毒づきつつ歩道橋を渡って戻ってきたわけですが、それから約一年。
 とある会社から新築マンションのプロモーションへの協力要請が弊社に。キャッチコピーから始まり、ウェブやPRツール類やらでご協力。

 そう、話の流れ的に見え見えですが、そのマンションこそそのスープカレー屋をぶっつぶした後に建てられたマンションだったのだ・・・。


■メイドインサッポロ

 魂など簡単に売り払う所存の業界末端受注業者であることを自虐的に述べたいわけではけしてなく、このマンションの「地元オリエンテッド」なプロジェクトのあり方に思うところ(賛同)があったので触れてみた。

 これを建てた建築デザイナーの方からして、東京からのUターンで、地元(札幌)で仕事をしたいがために自ら会社の札幌支社を立ち上げたというストーリーの持ち主。そしてプロモーションにかかわる制作会社や代理店までも地場の企業で揃えたいという意向(さらに若手のクリエイターなども積極的にフィーチャーしていきたいとのこと)で、ここにシンパシーを感じたわけです。

 昨年、オール北海道で組まれたプロジェクトから生み出されたプロダクトがGOOD DESIGNに選ばれて以来(型の制作まで道内企業だった)、単に近場で手を組むということ以上に、同じ経済域というか地政というか、境遇といってもいいかもしれない、そういう立場にある企業が組むことに意味・意義があることに気づかされた。

 簡単にいえば、外貨を稼ぐということと自分たちの暮らしをよりよくするということに集約されるのだけど、ようは「北海道/札幌が好き」ということが明示的であれ暗黙的であれ共有されており、そのために自然と各ステークホルダーがおのおの丁度よいリスクを引き受けあうということに繋がっていたと思う。結果的に市場に対して挑戦的な試みができたことが結果に表れたのではないかと。

 マンションのレジデンシャルブックで面白い試みができそうです。現在、積極的に札幌で活動することを選び取った各方面のクリエイターの方々を集めて、楽しい企画を進めています。おいしいスープカレーを食べつつ、アイデアを練る日々。


Cocteau Twins / Evangeline