Butterfly only knows.

札幌のデザインマネジメント会社社長のブログです。

川端康成『古都』より

勝率100%のプレゼンテーション

 これは自慢していいことだと思うのではりきって自画自賛するが、我が社はデザインによるコンペティションで負けたことがない。ここ3年間で20戦20勝ぐらいの成績で、勝率100%。つまりプレゼンテーションする機会さえあればその案件は必ずゲットできるということで、イチローよりもバレンティーノ・ロッシよりも全然すごい、と言えるだろう。これまで零細デザイン会社にしてはそこそこ大きな案件をやってきているのは、コンペで勝って受注→評判や口コミでさらに次の案件、という流れが大部分である。

 どうやってるのか。当然コツというかノウハウがあるわけで、ここに少しだけ公開してしまうことにする(もちろん企業秘密以外)。必ず勝てるなんて、いったいどんなデザインをしてるのか、ものすごくデザインスキルが高いのかと思うかもしれないが、それは勘違い。クオリティの高いデザインは必須として、しかし、それだけでは全く不十分。


■勝てるコンペにしかエントリーしない

 のっけから莫迦にしたようなコツで恐縮だが、これが最も大事かも。そのコンペティションがいわゆるデキレースではないか、レギュレーションに問題がないか、単なる見積額の大小で決まってしまわないか、などは最低限チェックする必要がある。そしてこれが肝心。決裁権をもっている方に直接プレゼンテーションの機会があたえられているかどうか。デザインコンペはプレゼンがすべてです。


■訴えるべきはベネフィット

 何ができるか、どうやってやるか、などという話は「こっち」の話であって、「あっち」にはほぼ関係ない。それより訴えるべきはクライアントの最終的なベネフィット★1なので、このプランを採用した場合の(あるいは自社をパートナーとして迎え入れた場合の)ベネフィットを正しく示す。まずはこれが大前提。これによりクライアントは、このデザイナーが何を目指してデザインを行ってきたのか、自社のビジネスをどのように理解しているのか、ビジョンを共有できるパートナーになりうるのかが判断できる。

★1 ベネフィット:直訳すれば利益。ただし必ずしもバリューとしての利益だけではない。

■問題のre-デザイン

 なんらかの解決すべき問題があるからデザインが求められているはず。たとえば売り上げをあげたい、客を増やしたい等々。その解決すべきことがらを分析・解体・再構築して、あらためて「問題をデザイン」し直してあげる。ひらたくいうと、要件仕様に対して茶々を入れるということ。

■解決に至るストーリー(作戦)

 解決すべき問題を再設定したら、それを解決するストーリーをわかりやすく示してあげる。当然最終の落としどころは提案するデザイン案になるので、そのデザイン案がソリューションとなるような解決への流れ=ストーリーを作り上げる必要がある。
 もしキメのデザイン案が「赤」だったら、もうここに使うべき色は赤しかないよな、と思わせるストーリー設定をしてしまえばいい。

■ここでやっとデザイン案を提示

 あとはそこにすっぽりはまるデザイン案を見せればいい。弊社ではこういう場合、デザイン案は一案しか提出しない。これまでの流れから、ソリューションが複数存在すると思わせたら負けだからだ。それにここまでの筋道のおかげで、自動的にデザイン上の些末なことは目をつぶってくれるようになっているはず。よくある、担当者の単なる好みで(赤が好き、青が好きetc...)左右されることをあらかじめ排除してしまうのだ。

■実効性の証明と次への布石

 最後にスケジュールや体制的なことを説明し、絵に描いた餅ではないことをわかってもらうのと、必ず次への展開にもふれておくこと。多くのクライアントは、「今回ここまで達成できるので、こういうファクターを将来追加すると、ほら、さらにこんなことが実現しちゃいますよ」という話にめっぽう弱い。これは裏側の意味として、将来的な可能性を付与することでプロジェクトの効果測定を先延ばしできますよ、と担当者にささやいていることでもある。


 以上がプレゼンテーション必勝法の骨子ですが、もちろんまだまだテクニックやノウハウはあります。ずいぶんプレゼンテーションセミナーをあちこちでやらさせてもらいましたが、参加された方はたいてい目から鱗状態に。それだけ効果的ではないプレゼン方法がデファクトになっているということかと思います。


♪ A Love Song / EGO-WRAPPIN' w/ Determinations