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札幌のデザインマネジメント会社社長のブログです。

川端康成『古都』より

ネットでの服や食品の売り方

CNETのリサーチコラム「ネットで服は売れない」は過去の話--ネットと実店舗の連携を進めるアパレル業界

 ちょうど今日、アパレル会社のサイト構築のオファーがあったことをスタッフから聞き、ECもやるのかな?と思っていたところに、CNETに凄まじくタイムリーなエントリーが。弊社でもいくつかECサイトの構築や運営を手がけていますが、実際の商品がもつイメージをどうやったら正確に伝えられるかというのはずっとつきまとっている問題です。

 リアルの店舗でさえ服を試着するという段階を経て購入にいたるというのに、小さなモニタの中の画像(動画であっても)だけで購入のトリガーを引かせるというのは無理がある行為だと思っています。大手といわれるアパレルのECサイトを一巡してみると、意外なほど商品イメージを伝えるということに関して割り切った実装をしていることに気づきます。商品点数が膨大なせいもありますが、例えばニッセンでは、1アイテムにつき、

  • モデルが着用したメインカット
  • カラーバリエーション+素材のアップ
  • 着用イメージ(1〜数点)

を600×600程度の大きさで見せています。
また、ベルメゾンでは1アイテムにつき、

  • 平置きした写真
  • 着用イメージ

を500×500程度の大きさで見せるだけで、あとは文字情報での訴求です。

 この割り切り方は、もしかするとウェブは印刷媒体(カタログ)を補完するものと位置づけているのかもしれません。カタログの鮮明で大きなイメージ写真により商品を選定してもらい、実際の注文は利便性の高いウェブを使ってもらう、という図式です。これは実店舗でいうと

 ネットで服が購入されるようになった理由としては、実店舗で実物を見たユーザーが何かしらの理由で(安いから、買い物に行く時間がないから、外が雨だから……など)ネットで購入したと考える方が自然であろう。

にあたる行為で、実店舗で商品を実際に見る代替としてカタログを用い、注文は面倒なファックスや電話ではなく(雨は降らないけど)ネットで行うということではないだろうか。ニッセンもベルメゾンも、「カタログのご請求」や「カタログからのご注文」というメニューが用意されていることからもウェブとカタログの役割について上記のような設定がなされているのではないかと推測できます。

CNETの記事中にも、

 ネットで服を販売する上で、実店舗との繋がりは必要不可欠であると考えられる。

あるいは、

「服」という特徴的な商材をウェブで販売していく上で、必要不可欠であるツール「実店舗」を・・・

 とあるように、アパレルのECについては「実店舗+ウェブ」あるいは「カタログ+ウェブ」という相互補完的な形態が必要なのではないかと思われます。ECサイト単体でのビジネスは、現時点ではかなり難しいと言えるのではないでしょうか。ウェブ以外でいかに消費者との接点を作れるかというところがポイントかもしれません。

食品ECサイトでは

 いっぽう、食品を主たる商品としたECサイトではどのような考え方になるでしょう。大きく分けて、

  • 商品名などから誰しもがその商品イメージを(つまり、味を)容易に想起できる商品
  • あまり一般的でないなどの理由により、その商品を飲食した経験がなく、味が想像しにくい商品

の2通りの商品群があり、それによりイメージ訴求の方法が異なることは想像がつくところです。

 2番目の「知られてないけどなんとか売りたい」場合、いかにシズル写真やコピーを駆使して「味」を伝えるかということが大きな取り組みになるかと思いますが、アパレルの場合と同じようにウェブと相互補完的なツールを用意できないか検討する必要があるかもしれません。印刷された商品カタログを用意するというのは、ものすごく1.0な感じではありますが、実は意外と有効なのかもしれません。次回弊社クライアントのECサイトで実験的に取り組んでみようかと思います。

 いずれにせよ、モニターやその他のデバイスが画期的に進化し、バーチャルのリアル度(変な表現。)が格段にアップしなければ、アパレルや食品のECサイトは「自立」できないのかも、と思いました。